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マスコミが「流行」のように扱っていないだろうか(中編)

西日本新聞記者・新西 ましほさん(中編)

前編では留学時代の体験を語ってくださった新西さん。

中盤からは福岡やマスコミの現状が話題となり、紙上での連載コラム「虹色のあした」を始めるに至った思いが感じとれます。

【前編】当事者の体験を聞いて「確かにそうだ」と共感

(2013年10月31日 福岡市内にて/聞き手:小嵒ローマ) 

 

人権問題という意識がまだまだ低い現状

ー2013年9月、在福岡アメリカ領事館主催の「LGBTの権利は人権」という講演会が開催され、アメリカの人権団体ヒューマン・ライツ・キャンペーン(以下、HRC)法務部長のブライアン・モールトン氏が来福。後日、ブライアン氏をインタビューした新西さんの記事が、新聞に掲載されましたね。

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↑ブライアン氏来日時のインタビュー記事(2013年9月28日掲載)

 

HRCは、企業がLGBTフレンドリーかどうかをチェックして、公表する活動をしています。非常に興味深い活動で、日本国内でも外資系企業が就職活動のセミナーをLGBT向けに開催するなど、少しずつ取り組みが行われるようになっていますが、福岡はまだほとんどありません。

在福岡アメリカ領事館の方は、地元企業にシンポジウムへの参加を呼びかけたそうですが、まったく興味を持ってくれなかったとおっしゃっていました。せっかく、アメリカの取り組みを知る機会があるのに、もったいないですよね。

今、女性や高齢者など多様な人材の力を企業のなかで生かそうという「ダイバーシティ」の重要性がさかんに言われていますし、外資系企業はLGBT当事者をさらに生かしていこうとしています。

 

ー福岡は、まだスタートラインにも立っていない。

ブライアン氏によると、アメリカの場合、LGBTフレンドリーであることを公表した方が、企業側のメリットが大きいとのことでした。有能な人が集まりやすいし、消費者に対するアピールにもなる。むしろどんどん公表する方向になっていると。

じゃあどうしたら日本でもその動きになるのかと尋ねたら、「旗振り役になる日本企業が現れて、LGBTフレンドリーをPRするようになれば、さらに進むのでは」とのことでした。

 

ーどこかが始めて、何か成果が見えれば…ということですね。

今は外資系企業の取り組みしか聞こえてこないし、まだ大々的にやっているわけでもないですよね。実際はどうですか。

 

ー首都圏はまだしも、地方都市においてLGBTフレンドリーであるという打ち出しが有益なPRになる、と企業は認識していないんでしょうね。これからだとは思いますが、今は様子見ではないでしょうか。

各地の団体が連携して、もっと全国的な大きい動きに繋がるといいんですけどね。アメリカを中心に世界的な動きがある今は、チャンスだと思います。

現在はどちらかというと、大阪・淀川区の「LGBT支援宣言」や、東京・文京区と多摩市で性的指向・性的自認による差別禁止条例案が可決されるなど、行政サイドが動いていますね。

 

ーHRCのブライアン氏が、「変化を生み出すのは当事者が行動を起こすこと」と講演で語っていました。福岡でも継続的なアクションできるといいですね。それにしても、福岡の企業が講演会に興味を示さなかったのは残念です。

でも議員の方は何人か参加していたようですよ。今後は議会の中で動きが多少あるかもしれませんね。

 

ー以前、映画祭開催の可能性を探るために、福岡の商工会議所に対して「LGBT支援に興味を持っている企業をご存知ないですか?」と問合せしてみたんですが、残念ながら何も情報を持っていませんでした。

HRCは、会員とサポーターが200万人という大規模なもの。日本でも旗振り役になれる大きな団体があるといいでしょうね。だから関連団体が連携して一つになった方が、力としては大きいとは思うんです。

 

LGBT当事者に選ぶ権利がない現状はおかしい

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↑インタビュー中、熱く答えてくださった新西さん

 

当事者の取材を通じて感じるのは、現状に不満を感じていない方が、かなりいること。取材の中で、「別に今のままでもいい」という言葉をよく聞きました。

 

ー確かに、「わざわざ問題にすることはない」という意見はありますね。

でも、本当に困っていないの?と聞いてみたい。いざという事態に直面してからでは遅いじゃないですか。

 

ー2年前、LGBTの法務支援に取り組む行政書士の方を招いて、「LGBTの今と未来を支えるセクシャルマイノリティーの法的サポート」というセミナーを開催しました。そのアンケートで、20代の方が「同性婚や養子縁組は興味がなく、必要とも思っていない。今幸せだったらそれでいいんじゃないかと思う」と記入していたのが印象に残っています。

女性の権利が今より低かった時代、権利獲得のために取り組んできた方達がいた。海外でのうねりがあって、日本にもその流れがきて、男女雇用機会均等法や男女共同参画が広がった側面があります。でもLGBTの人権問題に関しては、海外の流れはまだ日本にきていませんね。

 

ーアメリカで同性婚に関する最高裁判決が大きなニュースになって、「もしかしたら日本でも…」なんて一瞬浮き足立ちましたけど、まだまだ時間がかかりそう。

あれだけ大きく報道されましたけどね。

 

ーだけどそうした報道のおかげで、「同性婚」「同性愛」「性同一性障害」という言葉は、多くの人の目や耳に触れるようにはなりました。今後も継続してマスコミが取り上げてくれるとありがたいです。

個人的に気がかりなのは、マスコミがまるで「流行」のように扱って、社会の中で盛り上がる前に取り上げなくなってしまうんじゃないかと。だから継続は大きな課題です。

例えば2008年〜2009年にかけて、「周産期医療」に関する記事はたくさん載っていました。「産科医が少なくなって、妊婦がたらい回しになっている」といった報道を覚えていませんか。今でも産科医は少なく状況はあまり変わっていないのですが、記事やニュースの量はすっかり減ってしまっています。

 

ー言われてみれば、以前は多かったように感じます。

今ではさまざまなメディアが、「LGBT」「セクシャルマイノリティー」を取り上げるようになっていますが、それが一過性のものでは、変化の波にはならない。

周産期医療の報道量が減ったとは言え、当時の報道によって行政や国が動き、お医者さんの手当が増えたり、周産期医療をめぐる裁判を補償する制度ができるなど、多くの課題が改善されました。

ですから、今後はLGBT当事者の方がアピールしてくださるといいですね。もちろん私たちが現場に行って、積極的に取材する必要もあります。当事者自ら何に困っているのかを伝えることで、私たちは気づかされます。そうやって声を上げる人が多ければ多いほど、社会は変わっていくんだろうと思います。

 

ー変えたいと思っている人がいる一方、変えなくてもいいという人もいる。

同性婚までは必要なくても、同性パートナーを保障する制度があってもいいよね、という方なら多いと思います。制度があっても必要なければ利用しなければいい。セクシャルマイノリティーの方に選ぶ権利がない現状は、やはりおかしいです。

今のままでいいのか、将来どうしたら生きやすくなるのかということについて、「他人の事だしどうでもいい」という態度ではいけないと思います。

 

ーパートナー保障制度というテーマなら、LGBT当事者に限らず、さまざまな方と繋がって取り組める可能性がありますね。

たとえば事実婚の場合、社会保障制度は適用されますが、配偶者控除や医療費控除など、税制度の優遇はありませんし。

 

ーところが政治の世界の認識はまだまだ。婚外子の相続差別に対する民法改正が話題になった時、抵抗する国会議員がいましたね。

「家族制度が崩壊する」なんて言った議員がいましたね。日本の出生率はとっくに下がっているのに。フランスの場合、結婚していないカップルを保障する制度を整えることで、出生率が上がっているんです。「家族制度が壊れる」っていうけど、あなたの言う家族制度って何なの?って思いますよ。

 

(後編へ続く) 

 

【今回の記事に関連するお薦めの一冊】

2013年3月、東京ディズニーリゾートで初めて、レズビアンのカップルが結婚式を挙げ、話題となりました。

その結婚式までの2人の紆余曲折を、時にユーモアに、時にほろりとさせるエピソードで綴る、コミックエッセイ「レズビアン的結婚生活」(2014年1月発売)。

「結婚」「家族」「幸せ」とは何かを、改めて考えさせてくれる一冊です。

 

 

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