「女性のための健康と日常生活に関する調査」についての概要


2024年9月14日より「女性のための健康と日常生活に関するアンケート調査」が開始されました。

本アンケートは、セクシュアリティやSRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)の視点を取り入れた、女性を対象とした調査です。
レズビアン、バイセクシュアル、ヘテロセクシュアルなど、セクシュアリティにかかわらず、どなたでもご回答いただけます

日本では、女性が自身の性や生き方に対して自由に決定し、選択することに関する課題が依然として存在しています。
女性が自らの性的指向や性表現、人生の歩み方を主体的に決め、例えば、子どもを持つか否か、持つとすればいつが適切か、あるいは何人かという選択、さらには、誰とどのような性行為を行うか、またはそれを選ばないという選択など、こうした決定を自由に行える環境はまだ整っていないと感じています。

このアンケートを通じて、女性が自身の性や人生についてより主体的に考え、自由に選択できる社会の実現を目指しています。
皆さま一人ひとりのご協力が、この取り組みを進めるために不可欠です。ぜひ、皆さまの声をお聞かせください!

<調査の詳細>

1.調査の背景(問題意識)
私たちは性的マイノリティのコミュニティで30余年活動を続けてきました。
その間、活動を通してLGBTQのコミュニティの中にも情報や資源に格差があるという課題に直面してきました。それは、①レズビアン(L)、バイセクシュアル(B)女性に関する情報や資源がとても少なく、②社会的な課題として認識されにくい、という形で現れています。
その原因として、「レズビアン、バイセクシュアル女性等女性との親密な関係の経験をもつ女性」(以下「LB女性等」と称す)の実態を表すデータがほとんど無いためであると考えられます。
それには、活動現場から見て3つの原因が考えられます。
①当事者が中心となって実施した量的調査は、サイズが小さく、偏っている(調査対象はコミュニティに参加し、自覚的で回答に前向きな当事者である)
②そもそも明確なセクシュアルアイデンティティをもちコミュニティに参加していると限らず、可視化の障壁もあり、集合としての実態把握に迫れない
③HIVや自殺リスクのように社会的に注目される事象が明らかになっていない

<原因②の背景>
日本における女性の性の自己決定や選択の面での問題が今なお関与していると考えます。つまり、慣習的な女性の性は「受け身である」という性規範と社会的圧力のもと、女性が自身の性的指向、性表現を肯定的に自己決定できる環境ではありませんでした。1990年代に「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」の概念が日本に入ってきた際にも、「性の自己決定」に、「セクシュアリティ/セクシュアルオリエンテーション」を含めて紹介されることは少なく、不平等な環境で自己決定をせざるを得ませんでした。現在、「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(以下SRHR)」と言葉は変わり、自分の健康を守り維持する権利として、セクシュアルオリエンテーションや、ジェンダー・エクスプレッションについても紹介されるようになりました。

こうした環境が整いつつある現在であるからこそ、女性のセクシュアリティにフォーカスした調査をし、活用することが必要です。

2.調査の目的
本調査の目的は以下の通りです。
①セクシュアルアイデンティティに関わらず、「性的指向が同性または両性に向かう、あるいは女性との親密な関係を持つ経験がある女性」の実態を明らかにすること。
②困難や課題の訴求資料の収集
「LB女性等」が直面する困難や課題(例:DVなど)について、必要な機関へ訴えるための資料を得ること。
③セクシュアルアイデンティティ形成と人生設計への影響の考察
生まれながら女性として成長する中で経験した事柄(女性であること、性役割や性表現、他者からの認識と自身の認知の関係など)が、セクシュアルアイデンティティの形成や人生設計にどのように影響を与えるかを検討するための資料を収集し、結果を考察すること。

3.調査計画

1)調査対象
①セクシュアルマイノリティの中で、レズビアン、バイセクシュアル女性など、性的指向における非異性愛の(マイノリティであるという)アイデンティティをもつ女性(セクシュアルアイデンティティは問わない)
②同性のパートナーをもつ女性及び同性のパートナーをもつ可能性がある女性、もったことがある女性
③上記に該当しない女性全般
年齢は、中学1年生以上から。年齢の上限は定めません。

2)調査内容
<1年度目の調査内容>
①セクシュアリティ(性自認、性的指向)などの基礎情報
②セクシュアリティ決定に関するプロセス、セクシュアリティ関連の行動や他者関係
③パートナーシップの経験と制度に対する認知
④暴力被害経験、メンタルヘルス、その他の健康問題、健康に関わる行動
⑤セクシュアル リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRSH)関連、医療へのアクセス状況
⑥就労状況、経済状況、職場のセクシュアルマイノリティ制度状況

3)調査内容
①位置づけ
本調査は、LB女性等がどのような経験を経て、困難や問題に直面しているかを考え、今後の本調査計画を練る基礎データを得るため、試験的に調査を開始する位置づけとなります。
②データ収集方法
・量的調査を中心とした調査
・WEBを利用したアンケート調査で、データを回収できるオンラインシステムを使用(Googleフォーム)
・アンケート調査への協力呼びかけ

さまざまな層(年代、地域、セクシュアリティ、社会的立場等)にリーチできるよう効果的な広報手段を試みる。
❶レズビアン・バイセクシュアル女性向けの「クラブイベント」や「学習会」「遊び場」などを利用した会場
・札幌:9月14日 Leap!イベント、パレードブース、女性向けのお店、オフ会等
・福岡:12月14日 Leap!イベント、パレードブース、女性向けのお店、ミックスイベント等
・東京:未定
❷アンケート調査に協力をしてくれる関連施設、医療機関等
❸主催・協力団体のSNS
❹パレードなどのコミュニティイベントの協力ブース等

・調査期間
全体:2024年9月~2025年4月(暫定)

4.調査・プロジェクト組織
<役割分担
▼主催
Queer Life Project -QLiP- 工藤久美子
▼協力
NPO法人Rainbow Soup 五十嵐ゆり
▼調査チーム担当者
Queer Life Project -QLiP- 工藤久美子
NPO法人レインボーコミュニティcoLLabo 鳩貝啓美

▼調査アドバイザー
早稲田大学社会科学総合学術院 教授 釜野さおり氏
一般社団法人 にじいろドクターズ  吉田絵理子氏
北海道大学公共政策大学院 教授 池直美氏
勤医協札幌病院 産婦人科医 小内ゆい氏