アメリカLGBTIプログラムレポート、いよいよ本題に進みます。
プログラム概要についてはコチラをご参照。
今回のプログラムは、アメリカの首都ワシントンDCから幕を開けました。
7/11〜16 訪問地(1)ワシントンDC
そしてワシントンDCでの研修テーマは以下の通り。
- アメリカ連邦政府の概要
- 全国的なLGBTI啓発活動の組織
- LGBTIを含むビジネス的実践
首都ならではの内容です。
ワシントンDCツアー
立法・司法・行政機能を持つ、特別行政区域ワシントンDCの現地ツアー。
ツアーガイドから、ホワイトハウス、最高裁判所、国会議事堂、ワシントン記念塔、リンカーン記念館などを巡り、アメリカ首都の雰囲気や街並、歴史などのお話を聞く。「国会議事堂が小高い丘にあるのは、国民の代表であることを象徴するため」など、各建物の位置関係にそれぞれ意味があるとか。
↑いつもテレビで見ていたホワイトハウスの前で
↑同性婚合法化判決の際、大勢の人が祝福に集まった最高裁判所
↑国会議事堂は工事中でした
アメリカ連邦主義の概要についての基礎知識
アメリカの政治制度についての基本的な知識のレクチャー。
スピーカーはジョージワシントン大学のRobin Rachel Runge教授。
アメリカ政府は、ホワイトハウス=実行府、二院制の議会=立法府、最高裁判所=司法府、3つの部門に分かれている。
議員選出の方法、選挙区分けに関する課題、法案が通過しにくい議会の現状、法案通過のために各党が取り組むこと、独自の戦略、大統領の権限である行政命令についての解説を聞く。
いずれの話題にも共通する切り口が「抑制と均衡」。権力が集中しすぎないよう、お互いを抑制しあう構造。
1960年代、人種、国籍、宗教、年齢、障害の有無による差別を禁止するという大統領令が誕生。90年代にジェンダーアイデンティティの項目が追加された。
2014年、オバマ大統領が、アメリカ連邦政府と契約する会社に対して性的指向や性自認による差別を禁止する大統領令にサイン。
連邦議会では1960年代からずっと議論されているが、LGBTの雇用差別禁止法案(ENDA)は上院議会を通過したものの、下院議会はまだ通過していない。
なお過半数の州政府では、性的指向における差別は違法である。
↑Robin Rachel Runge教授と
連邦政府と州政府についての知識は、アメリカのLGBTI権利に関する理解を深めるうえで重要なカギとなるので、大変ありがたいレクチャーでした。
アメリカのLGBT権利運動の概要
スピーカーは、ジョージワシントン大学・多文化学生サービスセンター、LGBTセンターのディレクター、Timothy Vianney Kane氏。
1980年代、大学のラジオ番組でゲイであることをカミングアウトしたというTimothy氏。
手にしているカラフルなボールは、多様性豊かな人間を表現するためのアイテム。
人間は、白人、クリスチャン、男性など、表面的に見える要素に加え、性的指向など表面的にはすぐにわからない要素も持ち合わせている、ということを説明する際にとても機能的だそう。
アメリカのLGBT人権運動は、3つの分野でさまざまな取り組みが行われた。
◼︎ Social norms(社会基準)
◼︎ Policies & Procedures(政策と手続き)
◼︎ Laws & Funding(法律と資金)
特に大事なのが、Social norms 。その変化にもっとも影響を及ぼすのはテレビメディア。「THE L WORD」 「glee」など、当事者が登場するさまざまなテレビ番組が社会基準の変化に影響を与えた。
若者にとってはソーシャルメディアが重要なカギ。
また議員、俳優、スポーツ選手、アナウンサー、教育関係者など、社会的に地位の高い人々のカミングアウトが増えたこともポイント。3つの分野における活動が広がったことで、カミングアウトが増えたと指摘。
次に、活動のケースを2つに分類。
◼︎ Re-Active Initiatives(ネガティブな事例に対応するケース)
◼︎ Pro-Active Initiatives(前向きな啓発活動のケース)
かつての公民権運動はRe-Active Initiativesから始まっていたが、その後、啓発活動へと移行。現在は、周りの人と共通点を見出し、一体となって前向きな取り組みをするように選んでいる。
活動促進のポイントとしては、一番手に届きやすい果物をとること、親近感を感じている人との関係を構築すること、より尊敬を払ってくれる人々と行動すること。
↑ Timothyさんのユーモアあふれるスピーチ後、記念撮影もハイテンションに
アメリカにおけるLGBT人権運動のアウトライン、活動促進のポイントなどを学ぶことができました。
研修後にTimothyさんのお誘いで、多文化学生サービスセンター(The Muiticaltural Student Services Center)へ遊びに。時間外だったので通訳の方の同行なしで、行ってみました。
↑パンフレット、書籍、バッジ、プラカードなど、LGBT関連の資料がたくさん!
↑セミナーなどで使う名札には、自分が希望する代名詞(he , she , etc…)を書く欄が。センター内のトイレは「ALL GENDER RESTROOM」という表記。これで十分わかりますね。
最後に自撮り棒で記念撮影!
当事者の学生のみならず、さまざまな文化・背景をもつ学生のサポート、国際的な活動を長年にわたって取り組んでおられるからか、あまり英語が得意じゃない私たちに優しくゆっくりした口調で語り、笑顔であたたかく迎えてくれたのが印象的でした。
(中編へ続く)