「虹色のあした(18)」 性別変更に手術は必須?
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「生殖腺がないこと、または生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」。これは2004年から施行された性同一性障害特例法における性別変更の要件の一つです。
生殖腺とは、男性の体であれば睾丸(精巣)、女性の体であれば卵巣や子宮のこと。そうした生殖腺を切除しないと、望む性別に変更できないのが日本の現状です。
タイで生殖腺の摘出手術を受けた後、性別変更を果たし、今ではパートナーと結婚して幸せに暮らしている友人がいます。一方、術後の経過が思わしくなくて再手術するケースや、乳房切除手術を受けた当事者の死亡事故などが起きており、大きなリスクがあるのも事実です。
先日、世界保健機関(WHO)などが「生殖腺切除を性別変更の要件として強制することはできない」という共同声明を発表しました。またスウェーデンでは性別変更に関して生殖腺切除は必須ではなく、本人の意思が尊重されています。世界の潮流は、トランスジェンダー(心と体の性が一致しない人)の人権を守る方向へと進みつつあるのです。
意外に思うかもしれませんが、トランスジェンダー全員が手術を望むわけではありません。リスクの高い手術を強制されることなく、健康な体のまま望む性別で生きることができるよう、現在の法律を改正する必要があるのではないでしょうか。
(西日本新聞 2014年7月19日掲載/小嵒ローマ)